建設業に強い税理士・社労士・行政書士がフルサポート!

スマホで税理士

建設業の売上高とは何か?工事売上高・兼業売上高の違いと会計処理を徹底解説

投稿日: 2025年11月28日 | カテゴリー: 建設業

建設業の売上高とは何かを徹底解説。工事売上高(完成工事高)と兼業売上高の違い、会計処理や経審への影響、よくある誤解と対策まで詳しく紹介します。

建設業で「売上高」がなぜ重要か

建設業における売上高は、単に会社の規模を示す数値にとどまりません。公共工事の入札や経営事項審査(経審)の評価、資金繰りや利益率の算定など、企業経営の根幹に関わる指標です。特に中規模以上の法人にとっては、売上高の内容と計上方法がそのまま事業の信頼性や競争力に直結します。

公共工事・経営事項審査での役割

公共工事の入札に参加する際、企業の評価基準として用いられるのが経営事項審査(経審)です。この経審において、直近数年間の「完成工事高(工事売上高)」が大きな比重を占めています。

例えば、経審の総合評点(P点)は工事実績や財務内容によって算定されますが、その中でも完成工事高は最大約25%前後を占める重要指標とされています。売上高が高い企業ほど経審で有利となり、公共工事の受注機会が広がる仕組みです。

したがって、売上高は単なる会計上の数字ではなく、公共工事を受注できるかどうかを左右する戦略的な数値であるといえます。

利益率・資金繰りへの影響

売上高は会社の収益性や健全性を測る基本指標であり、利益率や資金繰りの基盤となります。建設業は前払金や出来高払いなど特殊な支払いスキームを持つため、売上高とキャッシュフローの管理が特に重要です。

例えば、工事売上高に対して原価がどれだけかかっているかを把握することで、完成工事総利益率を算出できます。この利益率が低下すると、いくら売上があっても資金繰りが逼迫し、経営の安定性を欠く要因になります。

また、兼業売上高(資材販売・保守点検等)を適切に分離して管理することで、建設本業の収益力とその他収益を正しく区分でき、金融機関や取引先からの信用評価にもプラスに働きます。

売上高の基本定義と区分

建設業における売上高は、一般的な企業会計と異なり、「完成工事高(工事売上高)」と「兼業売上高」に区分して管理されます。これは、建設業が長期にわたる工事契約を中心とする特殊な業態であり、正しい区分と計上基準が求められるためです。

完成工事高とは何か(工事売上高)

完成工事高とは、建設業の本業である工事の完成・引渡しによって計上される売上高を指します。建設業会計においては、通常の小売業のように商品を販売した時点で売上計上するのではなく、工事の完成時点をもって売上と認識するのが基本です。

例えば、総額1億円の建設工事を受注した場合、工事がすべて完了して引渡しが行われた時点で1億円が「完成工事高」として計上されます。

完成引渡基準 vs 工事進行基準

完成工事高を計上する方法には、大きく分けて 完成引渡基準工事進行基準 があります。

  • 完成引渡基準:工事がすべて完成し、発注者に引渡した時点で売上を計上する方法。短期工事に適用されることが多い。
  • 工事進行基準:工事の進捗度に応じて、毎期の売上を分割して計上する方法。契約金額や進捗率を基に計算され、長期工事に適用される。

2009年の会計基準改正により、原則として工事進行基準を適用することが求められるようになりました。ただし、工期が1年未満の短期工事については完成引渡基準を選択できるとされています。

長期工事・大規模工事の場合の特別ルール

工期が1年以上に及ぶ長期工事や、大規模プロジェクトの場合、完成までの期間に多額の原価が発生します。そのため、完成引渡基準を採用すると、完成年度に売上が集中して大きな利益変動が発生するリスクがあります。

このようなケースでは、工事進行基準を適用し、工事の進捗率(出来高割合や原価比例法など)に応じて売上を計上することで、収益と費用の対応を適正に反映できます。特に公共工事や大手ゼネコンの案件では、工事進行基準を用いた計上が一般的です。

兼業売上高とは何か

兼業売上高とは、建設業以外の事業活動によって得られる売上高を指します。建設会社の多くは工事の受注・施工だけでなく、資材販売や修繕・保守業務、不動産関連事業などを兼営しているケースが少なくありません。これらの売上は、建設業の「完成工事高」には含めず、兼業売上高として区分して計上する必要があります。

建設業以外の業務の具体例(資材販売・保守点検等)

兼業売上高に該当する業務の代表例は以下の通りです。

  • 建設資材や部品の販売(鉄骨、木材、住宅設備機器など)
  • 完成後の建物の保守点検・修繕サービス(定期点検、リフォーム、メンテナンス業務)
  • 不動産事業(土地や建物の売買、賃貸収入など)
  • コンサルティング・設計支援業務(施工管理指導、設計監理など)

例えば、建設会社が施工した住宅の定期点検サービスから得られる収入は、工事売上高ではなく兼業売上高として処理します。

兼業売上高を分けて計上する意味

完成工事高と兼業売上高を区分するのは、建設業の収益構造を正しく把握するためです。

もし兼業売上を工事売上に含めてしまうと、経営事項審査(経審)における工事実績が実態以上に評価されてしまい、虚偽申告とみなされるリスクがあります。また、金融機関や取引先は「本業(工事)の収益力」を重視するため、兼業と本業を分けて管理することが信用力の維持につながります。

さらに、内部管理の観点でも、どの事業分野が利益を生み出しているのかを明確にできるため、経営判断や戦略立案に役立ちます。したがって、兼業売上高は必ず区分して計上することが求められるのです。

会計処理・計上基準の種類と注意点

建設業の売上高は、他業種と異なり工事の性質や進行状況に応じた特殊な会計処理基準が適用されます。代表的な基準として「工事完成基準」と「工事進行基準」があり、さらに引き渡しの認定や未成工事勘定の管理も重要です。ここではそれぞれの特徴と注意点を整理します。

工事完成基準(完成した時点で売上を計上)

工事完成基準とは、工事がすべて完成し、発注者に引き渡された時点で売上を計上する方法です。短期工事や比較的小規模な案件に適用されることが多く、計上のタイミングが明確である点がメリットです。

例えば、工期が6か月未満の住宅建築や改修工事では、完成時に一括して売上高を計上できます。ただし、完成まで収益が計上されないため、長期工事に適用すると収益が偏在し、年度ごとの業績が大きく変動するリスクがあります。

工事進行基準(進捗に応じて売上を分割計上)

工事進行基準は、工事の進捗度に応じて売上を分割して計上する方法です。2009年の会計基準改正以降、工期が1年を超える工事については原則として工事進行基準を適用することが求められています。

進捗度の算定方法には、以下のような代表的な手法があります。

  • 原価比例法:発生原価の累計額 ÷ 総見積原価
  • 出来高比例法:実際の出来高割合を基に算定

この方法により、収益と費用の対応が適切に図られ、年度ごとの業績を安定的に把握できるのが利点です。ただし、原価の見積り精度が低い場合、利益が過大・過小に計上されるリスクがあるため、管理体制の整備が欠かせません。

引き渡し日の認定基準(検収、搬入、使用開始等)

工事売上高の計上時点を判断するには、「引き渡し日」をどのタイミングで認定するかが重要です。代表的な認定基準は以下の通りです。

  • 検収完了日:発注者の検収が完了した日を基準とする
  • 物件搬入日:施工物が現場に搬入され、受領確認された日
  • 使用開始日:施設や建物が実際に使用可能となった日

実務では「契約書に定められた引渡基準」に従うのが原則ですが、曖昧な場合は税務上の判断が必要です。誤った認定は、売上高の過大・過少計上による税務リスクを生むため、慎重な運用が求められます。

未成工事支出金・未成工事受入金などの勘定科目

建設業会計では、工事が完成するまでの間に発生する費用や受領金を管理するために、特有の勘定科目が用いられます。

  • 未成工事支出金:工事原価として発生したが、まだ完成していない工事にかかる費用(材料費、人件費、外注費など)
  • 未成工事受入金:工事完成前に発注者から受領した前払金や中間金
  • 完成工事未収入金:工事完成後に請求済みだが、まだ入金されていない売掛金に相当するもの

これらの勘定科目を適切に管理することで、収益と費用の対応関係を正しく把握し、資金繰りを安定させることが可能になります。

損益計算書・財務諸表での表示と経営への影響

建設業の損益計算書(P/L)や財務諸表では、工事売上高(完成工事高)と兼業売上高を分けて表示するのが特徴です。これにより、本業の建設収益とその他事業収益を明確に区別し、企業の経営実態を正しく把握できるようになります。

勘定科目の構成(完成工事高・兼業売上高・原価など)

建設業の損益計算書は、一般的な企業と異なり以下のような勘定科目構成になります。

  • 完成工事高:建設工事による売上(工事売上高)
  • 完成工事原価:当該工事にかかった原価(材料費、外注費、労務費など)
  • 完成工事総利益:完成工事高-完成工事原価
  • 兼業売上高:資材販売、不動産賃貸、保守点検など建設業以外の売上
  • 兼業事業原価:兼業事業にかかった費用

このように区分することで、工事部門と兼業部門の収益性を比較でき、経営分析に活用できる仕組みになっています。

利益率・粗利益の算出(完成工事総利益 vs 全体利益)

建設業における収益性を測る代表的な指標が、完成工事総利益率です。

  • 完成工事総利益率=(完成工事高-完成工事原価)÷ 完成工事高
  • 全体利益率=(完成工事総利益+兼業利益)÷ (完成工事高+兼業売上高)

例えば、完成工事高5億円、原価4.2億円の場合、完成工事総利益率は16%となります。一方で、兼業売上高5,000万円が加われば、全体利益率はさらに変動します。

この比較により、本業の建設事業の収益力と兼業事業の収益力を分けて評価できるため、金融機関の融資判断や取引先からの信用評価にも直結します。

経営事項審査(経審)と売上高の影響(評点の割合など)

公共工事を受注するために必要な経営事項審査(経審)では、売上高が重要な評価項目となります。特に「完成工事高(直近2年または3年の平均)」が大きなウエイトを占めており、総合評点(P点)の25%前後を左右します。

例えば、完成工事高が増加すれば「経営規模等評価(X1)」の評点が上昇し、公共工事の入札資格ランクが向上します。逆に、売上高が減少すると入札機会が制限される可能性があるため、建設会社にとって売上高は単なる会計数値ではなく経営戦略上の指標といえます。

よくある誤解とその対策

建設業の売上高は「完成工事高」と「兼業売上高」に分けて管理する必要がありますが、実務では誤解や処理ミスが多く見受けられます。ここでは特に注意すべき代表的な誤解とその対策を解説します。

「すべての売上が完成工事高に含まれる」との誤解

建設業の売上=完成工事高と誤解されがちですが、資材販売や保守点検、不動産収益などは「兼業売上高」として区分しなければなりません。これを誤ってすべて完成工事高に含めると、経営事項審査(経審)で虚偽申告とみなされるリスクがあります。

対策としては、売上を発生源ごとに分類する社内ルールを設けることが有効です。経理部門だけでなく、現場・営業部門とも連携し、受注段階から「本業売上か兼業売上か」を明確にしておくことが求められます。

兼業売上高を過小・過大申告するリスク

兼業売上高を過小に申告すると、完成工事高が過大に見えてしまい、実態以上に工事実績を水増しした形になります。逆に過大に申告すると、本来工事売上として評価されるべき金額が減り、経審評点の低下や公共工事入札への不利につながります。

このリスクを回避するには、取引内容と契約書の性質を必ず確認し、勘定科目を適切に仕訳することが不可欠です。例えば、施工と一体となった設備設置は工事売上に含まれますが、単なる資材販売は兼業売上に区分されます。

長期間工事の進行管理不足による原価漏れ

長期間にわたる工事では、進行基準による売上計上が義務付けられる場合があります。しかし、進捗率を適切に算定できないと、原価の一部が未成工事支出金に残ったまま計上されず、利益が過大に見える「原価漏れ」が発生します。

例えば、工事総額10億円のうち原価が6億円発生しているのに、進捗率を50%と誤って算定すれば、売上や利益が実態と乖離してしまいます。これを防ぐには、現場管理部門と経理部門が連携し、原価台帳・出来高データを突合する仕組みを構築することが重要です。

まとめ

建設業における売上高は、完成工事高(工事売上高)と兼業売上高を区分して管理することが必須です。工事完成基準や工事進行基準といった会計処理ルールを正しく理解し、損益計算書や経営事項審査(経審)に反映させることで、企業の信用力や入札資格に直結します。

一方で、「すべてを工事売上に含めてしまう」「兼業売上を誤って計上する」「長期工事の進行管理が不十分で原価漏れが起こる」といった誤解やミスは、税務リスクや経審評点の低下、さらには受注機会の喪失につながりかねません。

したがって、建設会社が今すぐ取り組むべき実践アクションは以下の3点です。

  1. 売上区分チェックリストを整備し、工事売上高と兼業売上高を明確に区別する
  2. 進行基準を適用する工事では、現場と経理の連携を強化し、進捗率を正確に算定する
  3. 経審や決算に備え、会計士・税理士など専門家の助言を取り入れ、社内ルールを標準化する

売上高の正確な把握は、単なる会計処理ではなく、経営戦略の根幹を支える取り組みです。自社の成長と公共工事への参入機会を広げるためにも、今一度、自社の売上高の定義と計上ルールを見直してみてください。